座談会御書「衆生身心御書」2024年(令和6年)11月度
〈御 書〉
御書新版2047㌻5行目~7行目
御書全集1595㌻18行目~1596㌻1行目
〈本 文〉
当世は世みだれて民の力よわ(弱)し、いとまなき時なれども・心ざしのゆくところ・山中の法華経へまうそう(孟宗)か・たかんな(笋)ををくらせ給う福田によきたねを下させ給うか、なみだ(涙)もとどまらず。
〈通 解〉
今の世は乱れて民の生活も楽でない。それも暇(いとま)もない時節に、日蓮の身を案じて身延の山中の法華経へ、孟宗の筍(たけのこ)を送られたのは、福田にすばらしい善根の種を蒔(ま)かれたのか。厚い志に涙もとどまらないのである。
〈講 義〉
本抄は最後が欠損しており、年月日、所、宛名ともに不明ですが、内容から推して身延から信心のあつい方へのお手紙とされています。
「衆生身心御書」との題号は、冒頭の「衆生の身心をと(説)かせ給う」との御文から後に名づけられたもので、内容をとって「随自意御書」ともいわれています。なお御真筆は、大石寺に所蔵されています。
今回拝読する箇所は御書の最後の部分になります。衆生身心御書は御書全集6ページにわたる内容となっており、今回の拝読箇所は最後のページの終わりの文章になります。
『衆生身心御書』では、日蓮大聖人が法華経の教えを仏教の真髄として位置づけ、末法における唯一の成仏の法として強調しています。
この御書では、法華経とそれ以前に説かれた諸経(爾前経)とを対比し、諸経は衆生の身心に応じて説かれた方便の教えであると指摘します。これは、衆生の求めに応じて仏が合わせたものであり、真実の仏の心、悟りには及ばない「随他意の経」であると述べられます。一方で、法華経は仏の悟りそのものである「随自意の経」であり、仏が自らの真実の境地を説いた経典であるため、どのような時代でも正しい救いをもたらすものとされています。
御書では、釈迦の出世の本懐が法華経であり、諸経は法華経への導入でしかないとし、法華経こそが仏教の根本であると説きます。そして、法華経は仏の心そのものであるがゆえに、信じるだけでも計り知れない利益があるとし、蓬(よもぎ)が麻(あさ)に支えられて真っすぐに伸びるように、法華経を信受する者は心がまっすぐに正され、即身成仏の境地に至れるのだと説明します。
さらに、大聖人は正法の時代から末法の時代に至るまで、仏教がどのように伝わり、変遷してきたかを述べています。インドでの伝法から始まり、中国、日本に仏法が伝わる中で、さまざまな僧侶や論師が仏の教えを弘めましたが、それぞれの教えは、法華経のように真実を明かしたものではないと批判されます。特に、日本においては伝教大師が天台宗を弘めることで法華経の正義が明らかにされましたが、
その後、真言宗を持ち込んだ弘法や、伝教大師の弟子でありながら真言宗に傾倒した慈覚・智証によって、法華経の教えがねじ曲げられてしまったと指摘されています。
その上で、他宗の僧侶たちが法華経を軽んじ、各経典の優劣を勝手に定めていることを戒め、法華経の教えを実践する者こそが真に仏の意にかなうと強調します。
念のためお伝えしますが、大聖人は化導のために法華経を宣揚されていますが、上野殿御返事に「今末法に入りぬれば余経も法華経もせんなし、但南無妙法蓮華経なるべし」とある通り、法華経本門文底秘沈の一大秘法、事の一念三千・人法一箇の本門の本尊こそが帰依の対象であることは言うまでもありません。
内容に戻ります。
次に法華経の行者に対する供養の功徳がいかに大きいかを示しつつ、逆に、仏意に背いた供養は大悪となることを説いています。大聖人は稗(ひえ)や土の餅を供養した過去の事例を引き、まことの人に供養することの功徳の大きさを強調しています。
ここで今回の拝読御書につながります。
当世は世みだれて民の力よわ(弱)し、いとまなき時なれども
(今の世は乱れて民の生活も楽でない。それも暇(いとま)もない時節に)
→蒙古襲来(文永の役:文永11年)
心ざしのゆくところ・山中の法華経へ
(日蓮の身を案じて身延の山中の法華経へ)
まうそう(孟宗)か・たかんな(笋)ををくらせ給う
(孟宗の筍(たけのこ)を送られたのは)
福田によきたねを下させ給うか、なみだ(涙)もとどまらず。
(福田にすばらしい善根の種を蒔(ま)かれたのか。厚い志に涙もとどまらないのである)
→福田:福徳をもたらす因を、田畑に譬えたものです。田んぼに種をまくと作物が育つように、福田によき種をまけば、功徳が実るということ。
この御書をいただいた信徒は、あいつぐ災難のために国力も低下し人々の生活に余裕もない時に、深い信心によって身延山中の大聖人のもとに「まうそう(孟宗)」の「たかんな(笋)」を送って御供養申し上げた。ゆえに大聖人は「福田によきたねを下させ給うか、なみだ(涙)もとどまらず」といわれて、その尊さを称えられています。供養する人の志が大切であるということです。
池田先生は、かつて本部幹部会(1999年2月)で、この御文を拝し「真実の法に供養すれば功徳は大きい。皆さまは広宣流布に戦っておられる。『身の供養』をしておられる。そして仏意仏勅の『世界一の創価学会』を堂々と築かれた。経文に照らし、御聖訓に照らして、その功徳は『無量無辺』である」とご指導されています。
御書講義 動画サイト
11月度座談会御書履歴
座談会御書 「種種物御消息」2000年(平成12年)
座談会御書 「食物三徳御書」2001年(平成13年)
座談会御書 「南条殿御返事」2002年(平成14年)
座談会御書 「南条殿御返事(法妙人貴事)」2003年(平成15年)
座談会御書 「衆生心身御書(随自意御書)」2004年(平成16年)
座談会御書 「妙密上人御消息」2005年(平成17年)
座談会御書 「南条殿御返事(白麦御書)」2006年(平成18年)
座談会御書 「南条殿御返事(法妙人貴事)」2007年(平成19年)
座談会御書 「妙密上人御消息」2008年(平成20年)
座談会御書 「単衣抄」2009年(平成21年)
座談会御書 「松野殿御家尼御前御返事」2010年(平成22年)
座談会御書 「曾谷殿御返事(成仏用心抄)」2011年(平成23年)
座談会御書 「高橋殿御返事」2012年(平成24年)
座談会御書 「報恩抄」2013年(平成25年)
座談会御書 「南条殿御返事(白麦御書)」2014年(平成26年)
座談会御書 「三沢抄」2015年(平成27年)
座談会御書 「上野殿御返事(竜門御書)」2016年(平成28年)
座談会御書 「食物三徳御書」2017年(平成29年)
座談会御書 「崇峻天皇御書(三種財宝御書)」2018年(平成30年)
座談会御書 「法華経題目抄」2019年(平成31年)
座談会御書 「異体同心事」2020年(令和02年)
座談会御書「寂日房御書」2021年(令和3年)11月度
座談会御書 「千日尼御前御返事」2022年(令和04年)
座談会御書 「寂日房御書」2023年(令和05年)
11月の広布史
――「創価学会創立記念日」――
11月18日
――牧口常三郎初代会長命日――
1944年(昭和19年)11月18日
――池田大作第三代会長命日――
2023年(令和5年)11月15日
『創価教育学体系』の発刊
初代会長牧口先生、殉教の日
■小説 人間革命 第1巻「一人立つ」
■小説 人間革命 第5巻「烈日」
■小説 人間革命 第12巻「新・黎明「憂愁」
■評伝・牧口常三郎・創価教育の源流・第一部
■今日より明日へ№2 「創立の志」を広布の炎と
■創価のルネサンス 11・18「創立記念日」の集い