座談会御書「高橋殿御返事(米穀御書)」2024年(令和6年)9月度

〈御 書〉

御書新版1953㌻6行目~7行目
御書全集1467㌻5行目

〈本 文〉

その国の仏法は貴辺に任せたてまつり候ぞ。
「仏種は縁より起こる。この故に一乗を説く」なるべし。

〈通 解〉

その国の仏法流布(広宣流布)は、あなたにお任せします。
「仏種(仏の生命)は縁に触れることによって起こる。故に、一乗(法華経)を説くのである。

〈背景・大意〉

今回学ぶ御書は、米穀御書です。
創価学会新版御書では本抄の題名を「高橋殿御返事」としていますが、自活檀林の研究によれば、本抄内容から「高橋殿御返事」とするのは誤りであるとしています。

自活檀林によれば、本抄に「かかる今時分人をこれまでつかはし」とあることから、何か厳しい状況下の中で供養の品が届けられた様子が伺われ、仏種は縁に依って起こる故に、「その国の仏法は貴辺に任せたてまつる」と地域の中心的役割を担うことを指示された上、治部房・下野房をすぐに身延に来させるよう依頼し、さらに松野殿にもこのことを伝えるよう依頼されていることから、これらの指示は迫りくる熱原法難の事前対策のためかと考えられます。よって、対告は南条時光、時期は弘安二年の秋前頃と推察される――としています。

本抄は、ご供養に対する返状となっており、同じ米穀でも謗法の者を養えば仏種を絶つ敵人を増長させ、法華経の行者を養えば、一切衆生を利益することになると、供養の志に感謝されています。
つまり、同じ米でも謗法の者に縁すればその供養は、一切衆生の仏種を断つ悪を助長させる原因(悪因)になってしまい、ますます強盛の敵人になってしまうことを教えられ、逆に法華経の行者へ縁すれば、その供養は、正義を養い、広宣流布を進め一切衆生を救っていく原因(善因)になることを教えられています。これは、因縁生起または、縁起と言われ、この世に存在する物事は、すべて因と縁によって成立し、何一つ固定的な存在は無く、生滅を繰り返し変化を続けていくという、仏法の根本的な考え方です。つまり、供養である米じたいは、悪でも善でもなく、縁によって悪因にも善因にも転じるということです。少し話はそれましたが、今回の拝読御書に移りたいと思います。

〈講 義〉

その国の仏法は貴辺に任せたてまつり候ぞ。

その国、つまり、住んでいる地域の広宣流布はあなたにお任せしますと、全幅の信頼を寄せたうえで、あなたが地域の広宣流布の主体者になっていきなさいとの激励だと拝されます。
私達で言えば、自分の住んでいる地域や、家庭や職場など、自身をとりまく様々な環境が広宣流布の舞台(主戦場)であり、しっかりと地に足を着けて、自身がその舞台の主人公になっていきなさいということだと思います。

池田先生は、【新人間革命第八巻の宝剣の章】の中で
新しき時代は、青年の腕にある。
出でよ!幾万・幾十万の山本伸一よ!と叫ばれました。
また、2017年一月度の大白蓮華の巻頭言では、「青年とは発心の異名である」と題され、「青年の青年たる証しとは、もとより年齢では決まらない。
信心の眼から見れば、今この時に、「発心」(決意)の生命を燃え上がらせていく人は、皆、妙法の青年なのだと私は思う。」とおっしゃっておられます。
これは、年齢に関係なく、私たち一人一人が、仏法で言う、青年の気概で、我こそが、山本伸一であるとの自覚で、地域広布の主体者として、どれだけ前進できたのか、また、成長できたのかが大事だということだと思います。

次に
「仏種は縁より起こる。この故に一乗を説く」なるべし。

どんな人であれ、必ず仏性が備わっていると、私たちは、日々の学会活動の中で学んできました。しかし、現実に仏性を開いて、仏の生命を凡夫の身の上に出すことができなければ、いくら仏性があると言っても、理屈に過ぎず、有るとも無いとも言えません。
先ほどお話しした、因縁生起や縁起の考え方からすると、あらゆる人に理論上、備わっている、仏性を起こさせるためには、因となる、仏種を植える作業が必要となってきます。
『曽谷殿御返事』に「法華経は種のごとく、仏はうえてのごとく、衆生は田のごとくなり」とあります。仏性はこの田に当たります。
仏という植え手が法華経(三大秘法の南無妙法蓮華経)という種を衆生という田に植えるという三つの関係性で仏性が起こるという《事》が初めて起こります。
また『当体義抄』に「至理に名無し、聖人理を観じて万物に名を付くる時、因果倶時不思議の一法これ有り。これを名づけて妙法蓮華となす。
この妙法蓮華の一法に、十界三千の諸法を具足して闕減(けつげん)なし。これを修行する者は、仏因仏果、同時にこれを得るなり」(618頁)とあるように、あらゆる仏を成仏せしめた本因である根源の法。具体的に言うと三大秘法の南無妙法蓮華経に縁する以外に、末法では、仏を顕現する方法が無いということです。
故に一乗(法華経)を説くのだと、大聖人は仰せになっておられると思います。
また、先ほどの段で「その国の仏法は貴辺に任せたてまつる」とした上で、法華経(三大秘法の南無妙法蓮華経)に縁する以外に成仏の方法が無いと言うことですから、正しき仏法を説いて人々を縁させていく、また、正しい方向へと人を導いていく人材が大事であり、そういう人材にそれぞれの地域でなっていきなさいということを教えられていると思います。まさに『人法ともに尊し』です。
私達で言えば日々、御本尊に題目あげて、教学を研鑽し、時には、この自活座談会の様に集まって、信仰体験や活動報告を聞いて互いに触発しあい、その生き生きとした生命で、それぞれの地域や職場・家庭などの各々の主戦場で、一人でも多くの人にこの仏法を語り、縁させてあげる。そして、この地道な積み重ねが、やがて大きなうねりとなって、広宣流布という大義に繋がっていくということだと思います。
故に本抄の「その国の仏法は貴辺に任せたてまつり候ぞ。」というのは、「広宣流布を頼むぞ!」という日蓮大聖人の並々ならぬ叫びであり、「仏種は、縁より起こる。故に一乗を説くなるべし」と仰られている通り、私たち一人一人が、各地域において正しき仏法を語る、真実を語る【一人立つ人材】となっていく事が、いかに重要であり、使命がある事だということを教えられているのが、本日の拝読御書の心であり、日蓮大聖人また師匠・池田先生の心ではないかと思います。

御書講義 動画サイトほか

9月度座談会御書履歴

座談会御書 「新池御書」2000年(平成12年)
座談会御書 「乙御前御消息(身軽法重抄)」2001年(平成13年)
座談会御書 「如来滅後五五百歳始観心本尊抄」2002年(平成14年)
座談会御書 「持妙法華問答抄」2003年(平成15年)
座談会御書 「顕仏未来記」2004年(平成16年)
座談会御書 「如説修行抄」2005年(平成17年)
座談会御書 「松野殿御家尼御返事」2006年(平成18年)
座談会御書 「上野殿御返事(刀杖難事)」2007年(平成19年)
座談会御書 「種種御振舞御書」2008年(平成20年)
座談会御書 「四菩薩造立抄」2009年(平成21年)
座談会御書 「乙御前御消息(身軽法重抄)」2010年(平成22年)
座談会御書 「崇峻天皇御書(三種財宝御書)」2011年(平成23年)
座談会御書 「崇峻天皇御書(三種財宝御書)」2012年(平成24年)
座談会御書 「持妙法華問答抄」2013年(平成25年)
座談会御書 「四条金吾殿御返事(世雄御書)」2014年(平成26年)
座談会御書 「千日尼御前御返事(真実報恩経事)」2015年(平成27年)
座談会御書 「可延定業書」2016年(平成28年)
座談会御書 「乙御前御消息(身軽法重抄)」2017年(平成29年)
座談会御書 「四条金吾殿御返事(衆生所遊楽御書)」2018年(平成30年)
座談会御書 「曾谷殿御返事」2019年(平成31年)
座談会御書 「三三蔵祈雨事」2020年(令和02年)
座談会御書 「四条金吾殿御返事(煩悩即菩提御書)」2021年(令和03年)
座談会御書 「経王殿御返事(土餅供養御書)」2022年(令和04年)
座談会御書 「御義口伝」2023年(令和05年)

9月の広布史

――「原水爆禁止宣言の日」――
昭和32年9月8日

■小説「人間革命」12巻 第2章「宣言」

■大道を歩む 私の人生記録Ⅱ 原水爆禁止宣言三十周年

■池田大作全集第百十巻 対談 希望の選択

■池田大作全集第百二十七巻 随筆 原水爆禁止宣言三十周年

■池田大作全集第百三二巻 随筆 新・人間革命
 「原水禁宣言の日」に思う 平和へ! 魔性の生命との大闘争を

9月広布史関連情報

日本パグウォッシュ会議 https://www.pugwashjapan.jp/

核時代平和財団 https://www.wagingpeace.org/

アボリション2000 https://www.abolition2000.org/en/