妙法で一切を慈しみながら包摂していく日蓮仏法～万法は己心に収まりて一塵もかけず

友人いわく

世界から見れば、一人の人物という存在は小さい。

なのに何故、日蓮は一切衆生救済、広宣流布とか、万人成仏とか大きなことを言いまくったのか。

現代でも、題目を唱えている人は同様に、なぜ身の丈以上の大きなことを語るのか。

百の答えがあると思いますが、思い浮かぶのは、次の日蓮大聖人の言葉でしょうか。

所詮万法は己心に収まりて一塵もかけず、九山八海も我が身に備わりて日月衆星も己心にあり(蒙古使御書)

妄想でも幻想でもない。

日蓮仏法的世界観としては、存在という概念で括られるものは皆、我が一身に収まる、宿しているというのです。

理性的な思考では、人間とそれ以外のものは別に存在していることを理解しますが、仏法による知慧、即ち仏智によれば、「森羅万象は我にあり」「森羅万象と我は一つなり」と人間を離れて存在はなく存在は人間に収まっていくといいましょうか。

以前、「森羅万象を担当」等と発言した人物がいましたが、何も彼だけではなく、また担当というものでもなく、『人間存在自体に森羅万象がある』というわけで、そう考えると、あなたの奥様もあなたの己心中にあり、ということになるわけです。いや、知らないと言ってもそういうことです(笑)

普通に考えれば、自分以外の存在は当然、大きいわけで、それを知るほどに『どうせ、私なんか』『何したって、何も変わらないよ』といわば簡単に諦め思考になったりするわけですが、『我が一身にこの世界も大空もあり』ということになると、『私がこの世界をより良くしていこう』との発想も生まれようというもので、故に題目を唱える日蓮大聖人と連なる人々は立正安国、広宣流布等を常に言うわけです。

それを現代的に言えば、『みんな、幸せになろうよ』『こんなに楽しく嬉しいのに自分一人ではもったいない、あなたにもどうぞ』ということでもあります。

「御講聞書」という御書にも、『やがては一切が妙法に帰入していくのです』と説かれており、それは『妙法は皆を包んでいます』ということです。今度は帰入、包摂という考えです。日蓮仏法は他者・他宗をせん滅、撲滅等と言われたりしますが、『妙法で一切を慈しみながら包摂していく』というのが、本来の理解ではないでしょうか。

以上のような観点が常の思考ですから、『大きいことを日常的に語る宗教』でもあるのだと思います。

御講聞書では『三千大千世界の土地草木人畜等』が『皆大地に備』るように、『八万法蔵十二部経悉く法華に帰入せしむるなり』ありとあらゆる経典が法華経へと帰入する。『善人も悪人も迷も悟も一切衆生の悪業も善業も、其の外薬師大日弥陀並びに地蔵観音横に十方堅に三世有りとある諸仏の具徳諸菩薩の行徳惣じて十界の衆生の善悪業作等を皆悉』くが『法華経に帰入せしむる』と教示されています。

御講聞書

一皆悉到於一切智地の事

仰に云く、一切智地と云うは法華経なり。譬えば三千大千世界の土地・草木・人畜等、皆大地に備りたるが如くなり。八万法蔵十二部経悉く法華に帰入せしむるなり。

皆悉の二字をば、善人も悪人も、迷も悟も、一切衆生の悪業も善業も、其の外、薬師・大日・弥陀並びに地蔵・観音横に十方、堅に三世有りとある諸仏の具徳・諸菩薩の行徳・惣じて十界の衆生の善悪業作等を皆悉と説けり。是を法華経に帰入せしむるを一切智地の法華経と申すなり。

意訳

一切智地というのは法華経・妙法蓮華経です。三千大千世界の土地、草木、人畜等が皆、大地に備わる如く八万法蔵・十二部経も悉く法華経に帰入するのです。

皆悉くの二字は、善人も悪人も、迷いも悟りも、一切衆生の悪業も善業も、その外、薬師如来、大日如来、阿弥陀仏並びに地蔵菩薩、観音菩薩も、横には十方世界、縦には三世のあらゆる諸仏の具徳や諸菩薩の行徳、総じて十界の衆生の善業悪業やその作用等を皆悉くと説いているのです。

これらが法華経・妙法蓮華経に帰入していくのを、一切智地の法華経というのです。