【投書】「同志少女よ、敵を撃て」を読んで

JIKATSU投書アイキャッチ

投書者:カナリア

本屋大賞受賞作品という事で興味を持ち、「同志少女よ、敵を撃て」(逢坂冬馬著)を一気に読んだ。

第二次世界大戦下の「独ソ戦」において、女性だけで構成された、ソ連の狙撃部隊。その中の女性スナイパー「セラフィマ」をヒロインとする物語である。

1942年のある日、ソ連に侵攻したドイツ軍によって、彼女の生まれ育ったイワノフスカヤ村の村人40名は、皆殺しにされてしまう。生き残った「セラフィマ」は狙撃訓練学校を経て、伝説のスナイパーに育ち、多くのドイツ兵を殺すことになる。

ある時戦場で、故郷では「許嫁」のような存在だった砲兵部隊の隊長「ミハイル」と邂逅する。そして二人が短い時間、話をする場面がある。

ミハイル:「(戦場であったとしても)女性を乱暴することが許されるはずはない。(中略)この戦争には、人間を悪魔にしてしまうような性質があるんだ。僕はそれを言いたかった」

主人公の「セラフィマ」には、「女性を守るために戦う」という信念と覚悟があった。

小説の最終場面、(ネタばれを防ぐため詳細は伏せるが)ドイツ兵ではなく、赤軍兵士に向かって、狙撃を実行するセラフィマ。著者が小説の題名を「同志少女よ、敵を撃て」とした理由が、浮かび上がり、腑に落ちるのである。

推薦の言葉の中で、ロシア文学研究者の沼野恭子氏が以下のように述べている。

「主人公セラフィマの怒り・逡巡・悲しみ・慟哭・愛が手に取るように描かれ、戦争のリアルを戦慄とともに感じさせる傑作である。」

奇しくも今、プーチン率いるロシア軍が、ウクライナ侵攻という非道・悪辣な戦争犯罪を続けている。80年前を舞台とするこの小説は、侵略する側は変われども、現在に蘇り、戦争の理不尽さと、戦争の虚しさを、改めて私たちに教えてくれる。

ここで思い起こすのは池田先生の小説・人間革命(全10巻)の冒頭部分である。

「戦争ほど残酷なものはなく、戦争ほど悲惨なものはない。だが、その戦争はまだ、つづいていた。愚かな指導者たちに、率いられた国民もまた、まことに哀れである」

まさにその通りだと言わざるを得ない。

何としても、人類の宿命転換は成し遂げねばならない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA