【投書】いま、私たちが身をもって学んでいること
投書者: 林信男
仏教では森羅万象、世の事象と『人間のいのちの働き』の関わりを説きます。
日蓮教学で重要な書と位置付けされる「守護国家論」には次のようにあります。
世間の安穏を祈るとも而も国に三災起らば悪法流布する故なりと知る可し
意訳
世の安穏を願いどれだけ正しい教え・法であると思って祈ったとしても、干ばつや水害による不作で穀物価格が異常高騰したり、戦乱により人々が嘆き苦しみ、疫病の蔓延により多くの人が亡くなり病んでしまうことがあるならば、それは悪法が流布している故であると知るべきです。
仏教で三災といえば穀貴(こっき)・兵革(ひょうかく)・疫病(えきびょう)の三つを意味します。
穀貴とは干ばつや水害による飢饉などで穀物価格が異常に高騰すること。
兵革は国家間の戦争や内乱、テロなど。
疫病は感染症の蔓延等をいいます。
そうです。
現在は三災のうち、疫病のど真ん中にいるのではないでしょうか。
では、その原因となる世に広まっている悪法とは何でしょうか?
これは何も宗教的なものだけではなく、広義では弱者に寄り添わず、民の嘆き悲しみを知らざる悪政による誤った思考、価値観ともいえると思います。忖度(そんたく)という言葉に象徴されるように、権威権力におもねり諂(へつら)い特別扱いし、弱い立場にある人々のことに思い至らない政道の乱れ。それにより疫病以前に、国に蔓延してしまった独善と利己主義、弱肉強食と道徳倫理の退廃。同時に進行していたのが火山の噴火、大水害、大風による災害、相次ぐ地震という天災地変です。世界的には、大火があり、正義の名のもとのテロ戦争も終わりません。
どれだけ祈りを強く捧げようとも、国に、地球上に三災が起きていることを以て、世に悪法が流布していることを知るべきである。
特に疫病の蔓延という日蓮が指摘したとおりの世相となった今、自らに向き合い「悪法とは何か」に思いを巡らす時が到来したのではないでしょうか。
※前回は「三災七難」のうち七難の様相を見ましたが、今回は三災を確認しました。
※信仰をされていない方の理解のため、「大聖人、上人」等の尊称は略しています。