【投書】世界の秩序が変わるとき

投書者:カナリア
「世界秩序が変わるとき」新自由主義からのゲームチェンジ 齋藤ジン著 文芸新書を読みました。面白かったので、以下書評を兼ねて、若干紹介いたします。
著者は言う。
『日本は今、数十年に一度の千載一遇のチャンスを迎えている。東西冷戦後の世界秩序を支えてきた、{新自由主義}が崩壊し、勝者と敗者がひっくり返る、「ゲームチェンジ」が起きているのだ』
と。著者は、ヘッジファンドの雄、ジョージソロス氏を大儲けさせた実績を持つ、伝説の金融コンサルタントでもある。
アメリカに30年以上住み、トランスジェンダーでもある著者は独特の世界観を持ち、本質を掴んだ見通しで、投資の専門家であるヘッジファンドだけを顧客にするコンサルタントにしている。著者は現在の状況を、以下のように捉えている。
『世界はアメリカを地殻変動の震源地とする“大転換”のただ中にあり、これから起きる変化は日本にとって有利なものになる・・』
と。
今から100年前になる、1930年代~日本は覇権国であるアメリカから圧力を受け敗戦を迎える。そして今度は共産主義を防ぐための西側同盟国として厚遇を受け発展。1980年代から90年代、覇権を脅かす存在とみなされ圧迫され、その後バブルは崩壊、「失われた30年」を過ごすことになる。要は覇権国に親和的な時は発展、敵対する時は没落の時を経る・・。
属性より能力、伝統・文化より経済合理性を重視する空気が社会を席巻した、新自由主義の急速な30年。そして今、トランプ大統領に象徴されるように、この“空気”が逆回転を始めてきていると著者は分析します。
『アメリカはカジノのオーナーであり、日本は30年かけてバブル期入社の余剰人員を、首を斬らずに整理した』
等、著者は手厳しくも明快に、本質を突きます。
周回遅れの日本経済ですが、地政学的な見地からも、日本は、相対的有利な状況になってきているのではないか。これが著者の主張の骨子です。
読み進む中で、私は次の一節に共鳴しました。
『あらゆる既存システムは一種のコンフィデンス・ゲームと言えます。多くの人々がそれにコンフィデンス(信頼)を置いているうちは、既存システムは機能しますが、ひとたびそれが揺らぐと、勝者と敗者がひっくり返る可能性が出てきます。』
筆者は、このゲームチェンジが新自由主義に対して起きていると言っているのですが、私には日本の政治や宗教団体にも当てはまるのではないかと思えてなりません。
「世界秩序が変わるとき」の渦中で、私たちは生きているのだと思います。