【投書】「SGI教学」の変遷と発展
投書者:風来坊
ここで定義した「SGI(=Soka Gakkai International)教学」とは、広義には、「世界各国のSGI法人・会員の為に、翻訳&流布された日蓮仏法。書籍」の事である。
その「日蓮仏法」の内容は、「歴史的には、『日興門流』として受け継がれてきた日蓮仏法を、創価三代会長(なかんずく、池田大作SGI会長)の解釈により、世界宗教として敷衍(ふえん)された仏法」である。
【1】「SGI教学」の歴史的変遷(「英語版(欧州言語)」を中心に)
1)始まり(1960年代)
英語圏(欧州言語)世界への「SGI仏教とその教学」の普及は、草創期の創価学会員達と池田大作SGI会長により、1960年初頭より、米国およびカナダから始まり、欧州に於いては、粗同時期に、UKから始まった。
この時期から、英語出版物による「SGI教学」が、紹介され始めた。欧州に於いては、UKのみでなく、その他の西欧諸国(フランス、ドイツ、イタリアなど)でも布教が始まり、その教学の基礎資料も、「英語出版物」から西欧各国語に翻訳される事が多かった。
2)その後の発展(1970年、80年代 NSIC)
(創価学会と日蓮正宗が、「僧俗和合」方針の元で活動していた1989年迄は、)「SGI教学」の公式な翻訳・発信拠点は、池田SGI会長より1973年12月に構想を発表され、1974年より開始した「NSIC=日蓮正宗国際センター」であった。
資料:「日蓮正宗国際センター」を設置 1973.12.16 第36回本部幹部会 池田SGI会長講演
このNSICより、正式な英訳御書の分冊版(The Major Writings of Nichiren Daishonin vol.1 1979 – vol.6 1990)、英語版・仏教哲学辞典(A Dictionary of BUDDHIST Terms and Concepts 1983)などの基本書が発刊され、(宗門的理解の枠内という限定は有ったが、)正確な英訳版として、教学の深化に活用できる様に成った。
この折、池田SGI会長から、「世界へ仏法流布の基本構想」として、以下が確認された。
「仏法を受け入れる機根も、国柄により、民族的性格によって、更に多様であります。したがって、海外の仏法流布ということは、一つの中枢から強力な指示によって行われ、推進されるというものではなく、あくまでも、その国の人々の自主性と情熱、責任感によって進められるべきであります。いな、これは海外の問題のみならず、日本国内においても、まったく同じであり、仏法流布というものは、かくあらねばならないと思うのであります。」
「海外各国の日蓮正宗組織は、まだその一つ一つをとってみると、会員数も少なく、出版活動などにしても、十分な仕事ができる規模にまでなっておりません。しかしながら、今後の息の長い仏法流布のためには、出版物が強く要請される。そうした点について“兄弟組織”として私ども創価学会の支援が、強く求められるわけであります。「国際センター」が、その推進の任にあたるわけであります。」
(1973年12月16日 第36回本部幹部会)
この間の「SGI教学」に於いても、池田SGI会長は、1970年代中旬より「(宗門的な呪縛に捕らわれない)世界宗教としての日蓮仏法」論を展開され始めた。
しかし、残念ながら、この「世界宗教としてのSGI教学」構想は、1979年の「第一次宗門問題」により、1991年まで、10年間以上「頓挫」させられた。
3)(宗門の呪縛を離れ)「世界宗教としての新時代教学」(1990年代以降)
1989年には、当時の日顕法主により、「C作戦(創価学会員の分断)」が露呈し、「第二次宗門問題」が起こる。この結果、池田SGI会長により「魂の独立宣言=SGI在家集団の独立」が決定。「頓挫」させられていた「世界宗教としての新時代教学」が、本格的に開始された。
一方、各国SGI組織(法人)の支援は、改めて四谷3丁目に建物を持つ「SGI本部」へ移管され、学会本部内の出版&翻訳関係者との連携&改組により、より機能的な「SGI教学の英語版&その他主要国際言語」の翻訳&出版作業が、飛躍的に発展し始める。
同時に、池田SGI会長は、「世界宗教としての新時代教学」の基礎と成る基本書籍①法華経の智慧②御書の世界などの対談&執筆、重要な諸御書(生死一大事血脈抄、開目抄、希望の経典「御書」に学ぶ)などを、1991年から2007年まで、連続して講義&出版下さった。
これらの「世界宗教としての新時代教学」の基本体系は、2000年迄にほぼ完了し、この教学テキストは、日本語では、「教学の基礎―仏法理解の為にー創価学会教学部編」(2002年1月発刊)として、発刊された。これら全てを網羅する「仏教哲学大辞典(第三版)」は、2000年11月に発刊され、英語版は、「SGI仏教辞典(The Soka Gakkai Dictionary of Buddhism)として、2002年に発刊された。
*因みに、これ以前の「新版・仏教哲学大辞典」は、1985年11月発刊版であった。
日蓮仏法の基本書と成る「御書」の完全英訳版は、以下により完結された。
1. The Writing of Nichiren Daishonin Soka Gakkai (vol. I) by the Gosho Translation Committe 1999
2. The Writing of Nichiren Daishonin Soka Gakkai (vol. II)by the Gosho Translation Committe 2006
3. The Record of the Orally Transmitted Teachings (by Burton Watson) 2004 英文・御義口伝
4. The Lotus Sutra (by Burton Watson) 1993 Columbia University Press
5. The Lotus Sutra and Its Opening and Closing Sutras (by Burton Watson) 2009 Soka Gakkai
【2】「SGI憲章」と「SGI教学」
前述の【1】「2)その後の発展(1970年)」の通り、池田SGI会長の「世界宗教=SGI」「仏法流布」構想の根本は、「仏法流布ということは、一つの中枢から強力な指示によって行われ、推進されるというものではなく、あくまでも、その国の人々の自主性と情熱、責任感によって進められるべき」「日本国内においても、まったく同じであり、仏法流布というものは、かくあらねばならない」であった。
この池田SGI会長の構想は、「3)(宗門の呪縛を離れ)「世界宗教としての新時代教学」(1990年代以降)」1995年11月に、「SGI憲章」(=SGI仏法流布の憲法)として、結実した。
SGI憲章
https://www.sokagakkai.jp/glob al/sgi-charter.html
SGI Charter
https://www.sokaglobal.org/res ources/sgi-charter.html
*SGI仏法の特徴は、『「人間主義」に基づく「世界市民の理念」「寛容の精神」「人権の尊重」を高く掲げ、非暴力と対話により、こうした人類的課題に挑み、人類社会に貢献する』
『6. SGIはそれぞれの国の実情をふまえて、各加盟団体の自立性と主体性を尊重する。』である。
これら、池田SGI会長による「世界宗教としての新時代教学」の基本体系は、2000年迄にほぼ完了し、英語&世界主要言語版の発刊も進み、2007年迄には、池田SGI会長の全著作の出版が完成した。
一方、世界各国SGI の大発展とは裏腹に、「日本SGI法人」は、1979年4月の第一次宗門事件時に、池田SGI会長を擁護せず、結果として日蓮正宗・宗門と妥協し、池田SGI会長を「日本SGI法人」から追放し、衰退の一途を辿った。
特に、池田SGI会長が本幹への登壇も終わられた「2010年5月」以降、「日本SGI法人」は、池田SGI会長の精神を無視した「宗門的特権階級意識による閉鎖&独善性」へと傾斜を進めた。具体的には、2018年の「会憲」「社会憲章」の制定により、①信濃町本部の聖地化②信濃町本部による「各国SGI法人」の支配の徹底に着手した。教学面では、2023年11月発刊「創価学会教学要綱」により、不明瞭な形式を取りながら、③世界宗教としてのSGI教学を歪曲している。同時に、日本および各国SGI法人の創価学会員で、「公開の意見」を述べるものには、言論統制を敷き、情報の非公開化、会員同士の交流制限などを進めている。
これらの事態は、本来の池田SGI会長(及び創価三代会長)の精神と乖離しており、極めて「危険な状況」と言わざるを得ない。
追記:
*信濃町執行部による「池田SGI会長の「世界宗教としての新時代教学」」歪曲
「創価学会教学要綱」2023年11月発刊
*須田晴夫氏による上記の批判的考察書:「『創価学会教学要綱』の考察」2024年8月発刊