座談会御書「諸経と法華経と難易の事(難信難解法門)」2023年(令和5年)1月度

〈御 書〉

新版御書 1346㌻10行目~11行目
御書全集  992㌻14行目~15行目

〈本 文〉

仏法やうやく顚倒(てんどう)しければ世間も又濁乱せり、仏法は体のごとし世間はかげのごとし体曲れば影ななめなり

〈通 解〉

日本は随他意の方便の教えを根本としてしまった。それにより、仏法が次第次第に顚倒(てんどう)したので、世間もまた濁り乱れてしまった。仏法は本体であり世間法はその影のようなものである。体が曲がれば影は斜めになる

〈講 義〉

 本抄の執筆は弘安3年(1280年)5月26日、日蓮大聖人が59歳の時に身延の地から下総(現在の千葉県北部)の富木常忍に対して与えられたお手紙です。
 題号の「諸経と法華経と難易の事」は、別名を「難信難解法門」といいますが、後に名づけられたもので御真筆には題号はなく、ただ宛名に富木殿御返事とあるのみのようです。
 現在は中山法華経寺に所蔵されています。
 このお手紙の背景は、本抄執筆の6年前1274年(文永11年)に、初めて蒙古襲来がありました。(文永の役)
 翌年の1275年(建治元年)に、元は使者を日本に派遣し日本の服属を求めましたが北条時宗は、龍ノ口で元の使者を処刑しました。
 本抄執筆の前年である1279年(弘安2年)にも、南宋と日本のよしみを元に、通好を薦めれば日本は応じるかも知れないということで、宋の国の旧臣を使者に立て来日しましたが、斬首となりました
 幕府はその頃、博多湾沿岸一帯に石により築く防塁の「石築地」(いしついじ)を造るなどして再度の蒙古襲来に備えていました。
 実際に、本抄執筆の翌年1281年(弘安4年)には、二度目の蒙古襲来が起きています。(弘安の役)
 当時の世間は、そのような蒙古襲来の影に怯え不安定で世の中が乱れている時期でもありました。
 そのような時代背景の中で本抄は、富木常忍が法華経法師品の難信難解の文について質問を寄せたことに対し日蓮大聖人が問答形式で答えています

 大意としては大きく分けて二つになります。

 一つ目は、法華経以外の諸経は仏の随他意の教えであり、易信易解である。それに対して法華経は仏の随自意の教えであるが故に難信難解であるとし仏の真意をそのまま説いた法華経こそが一切経の王であり、一切衆生・皆成仏道の経であることを明かされています。
 ここで出てくる随他意とは、仏が衆生の機根や好みに応じ説法したもので 自らの悟りの真実に誘引するための方便の教えを指します。
 爾前権経は全てこの随他意の法門に当たります。
 つまり随他意の教えは衆生にとって機根に応じたものなので「信じ易く、解し易い」ことは当然といえます。また、それに対し随自意とは仏が衆生の機根や好みがどうであれ、仏が自らの悟りをそのまま説くことを随自意と言います。方便である随他意の法門に対して随自意は真実の教えである法華経を指します。
 つまり随自意の教えは仏の正しい考えに、そのまま随わせるという法門であり衆生にとって「信じ難く、解し難い」法門といえます。

 大意としての二つ目は、今回拝読する部分でもある仏法は体、世間は影との法理から随他意の法門が流布して仏法が顚倒(てんどう)し体が曲がっている日本の状態を憂いています。そして、仏の随自意である法華経を立てて体を正さなければならないと訴えられています。また大聖人門下は仏の正しい心にかなっているがゆえに成仏をとげることができるのであると、その素晴らしさを述べられています。

 仏の真意、随自意である難信難解の法華経を根本とせずに随他意・易信易解の爾前権経を根本としたために、仏法の顚倒(てんどう)により、世間の様相もますます濁乱してきたことを述べられ、その不幸、厄災の根本を指摘されています。また、これは正しい仏法を根本とすることで自然に皆が成仏できることを示され、世間も安定し平和にもなると受け取れます。
 池田先生は平成5年9月のご指導の中で
「信心は即、生活に表れる。生活は即、信心の証明の舞台である。人間としての本当の勝利も、幸福も、生活の地道な一歩一歩のうえに築かれる。」と仰られています。

仏法やうやく顚倒(てんどう)しければ世間も又濁乱せり、仏法は体のごとし世間はかげのごとし体曲れば影ななめなり

 本体と影は常に共にあり、切り離せないように、正しい仏法が弘まれば、世間は平和になり環境もきっとよくなると確信します。また、もう少し小さい次元で言えば、私たちの、その身と、生活環境もまた共にあります。もちろん、御本尊様も三世を貫く宇宙根源の法たる三大秘法を具現化したものとかよくわからないものでは無くして、御本尊様は、御本仏、日蓮大聖人であり、切り離すことができない影は御本仏がおられる寂光土としてそこに示されていると私は学びました。
その御本尊様を受持して、お題目を唱え、日蓮大聖人と境智冥合し、私たちの胸中にある、所生の本尊を開く、そして、大聖人と同じく、切り離すことができない私たちの生活環境たる国土世間も、影が身に添うように、また、その境涯に応じた形として変わっていく。今回の御文を拝して確かな道理だと思いました。
 だからこそ、信仰は本来、良くも悪くも、結果がでると確信しますし、正しい信心で、御本尊様に裸で全力でぶつかっていく醍醐味が、ここにあると思いました。
また次の目標を掲げて、皆さんと共にもっと良くなるために、今日から元気に出発をしていきたいと思います。

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1月度座談会御書履歴

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