【投書】新型コロナウイルスの世界的流行に思うこと
投書者:林信男
その昔、中国(前漢)では災異説(儒学者・董仲舒[とうちゅうじょ]による)というのがあり、人の行いと疫病や自然災害の関連が説かれていました。
悪政が続けば天は怒り、疫病の流行、水害、大風、地震、彗星の飛来、大火となって現れるというものですが、今日の世界で起きている事態がまさにそれではないかと思います。
鎌倉時代の仏教僧・日蓮は30代後半で正嘉の大地震に被災し、続く大風、大飢饉、大疫病による大量死という惨状を目の当たりにして、「既存の宗教がどれだけ祈れども、なんの力も験(しるし)もなし。むしろその存在の意味が問われるような打ち続く惨状ではないか。ことここに至っては時の権力者を諫めん」と、やむにやまれぬ思いから「立正安国論」を以て「人々の心に、世の根底に善きもの(正法)を立てるべきこと」を訴えました。
「立正安国論」で引用された「薬師経」では、「世の指導者が善きものを心の規範とせず、人の道に反する行いをしたり悪政をなすならば、次のような七つの難が起きるだろう」として七つの難を示していますが、実に今日の事態を警告するものであったかと思うものばかりです。
多くの人々が伝染病の流行に苦しめられる
人衆疾疫難(にんしゅしつえきなん)
⇒まさに現在の新型コロナウイルスの世界的流行
他国から侵略される
他国侵逼難(たこくしんぴつなん)
⇒武力により他国から攻められる、脅されるだけではなく、今日的には国内の失策・失政を他国から批判されて国際社会における地位の低下等も当てはまると解釈できます。
自国内で同士討ちが起きる
自界叛逆難(じかいほんぎゃくなん)
⇒国内における同士討ちが頻発する、現代では権力者が民に寄り添うことなく権力闘争に明け暮れる、また人々が自分のことだけで他者のことを全く思わず「同苦」がない等もあてはまるでしょう。
人々を驚かす大彗星や流星が現れる、天体運行の変異
星宿変怪難(せいしゅくへんげなん)
日食、月食が起きたり、太陽の輝きが薄くなり冷害となる
日月薄蝕難(にちがつはくしょくなん)
時季外れの暴風雨が起こる
非時風雨難(ひじふううなん)
季節、時期になっても雨が降らない
過時不雨難(かじふうなん)
悪政、非道がまかり通り頂点に達する時に天災地変、疫病が起きてしまう・・・・
「あの時」の日蓮の憤りが共有される、それが「今この時」ではないかと思います。